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『アフリカのへそ』

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2005年 07月 26日

”地球の人間国宝” Mr. ヒュー・マセケラ

”地球の人間国宝” Mr. ヒュー・マセケラ_a0025361_14214840.jpg
joburgさんのHugh Masekela 来日!
sinさんのヒュー・マセケラ@ブルーノート東京
suteroさんのHugh Masekela/Reconstruction
ahinamaさんのヒュー・マセケラ(Hugh Masekela)@Blue Note Tokyo 2005年7月23日


<前項からつづきます>
バックミュージシャンは南アフリカ、シェラレオネ、ボツワナなど全員生粋のアフリカ人ミュージシャン。 キーボードが2人にドラム、パーカッション、ベース、ギター、サックス兼フルート。 そして最後にマセケラおじさんが登場。

マセケラおじさんはトランペッターですが、パーカッションも弾きこなし、そして歌います。
赤ちゃんのガラガラを大きくしたようなアレ。 洗濯板みたいなギザギザを、棒でなでるアレ。 あと棒でたたくとカンカンという音が鳴るアレ。 巨体をリズミカルにゆらしながら、おじさんが踊ります、歌います。 

もうね。 音に色がついてるとでもいいましょうか。 そんでその色ってのは、もちろんカンガのような原色なの。 奏でられる音、音符のひとつひとつが生きてる。 飛び跳ねてる!!



ジェイルから出所した、タフな女性のことを歌った歌。 
ヨハネスブルグに上京した若者へ、故郷に帰ってこいよと歌った「ノンソトコロ」。
地方から列車で長い時間ゆられて、1日16時間も鉱山で過酷な労働をさせられても稼ぎはほとんどない。 そんな労働者たちの悲哀を歌った歌。

曲の前におじさんは解説をしてくれるので、こういう歌なんだ、というのはわかります。
そしておじさんのパーカションとともに、曲がスタートします。
労働者たちを監督するためのカンカンという鐘の音、鉱山へ向かう「シュッシューッ」という汽車の音を、マセケラおじさんは実にリアルにパーカッションで表現します。

だから1曲1曲がドラマかミュージカルを見ているよう。 まるでそのシーンが見えるかのように、とても情景豊か。 決してそんなに大げさなパフォーマンスではないと思います。 踊るといっても、リズムに合わせてかるく体を揺らす程度。 歌詞だって部分的にしかわからないし。 それでも不思議と伝わるものがある。 もうビンビンにね。
本当に音楽は凄い。 音ってすごい。 音楽の持つパワーと、その伝える力に圧倒されました。

前日の晩、J-WAVEのSoul Trainにマセケラ氏は生出演していて、ナビゲーターのRYUさんが大興奮してたけれど、その気持ちはよくわかる。
R&B、SOUL、FUNK、RAP。 今では日本人ミュージシャンが演るのも当たり前になったこれらの音楽たちは、私たちにとってはまだ輸入物なんだと思った。 それはそれで、もちろん良い。 そこに日本のテイストをミックスして、どんどん新しい音楽が生まれるのは素晴らしい。

でもこの日観たのは、もっと違うなにか。 毛穴から吹き出すグルーブと生命力。
キリマンジャロの村で聞いた子供たちの歌、教会の日曜礼拝で聞いた村人のゴスペル。 あの時に感じたのと同じ感じ。 音をね、掴むというかね。 説明するのは苦しいんですが、音に乗るのがほんとに自然で軽やかなの。
ああ、地球上で最初に音楽を奏でたのは絶対にこの人たち、まちがいなくアフリカ人の祖先だと思いました。

この日のライブには大満足だったのですが、一方で”なんかもったいない”って思いもありました。
お客さんがオトナしすぎたのか、みんな最後までしずか~に、座って聴いてるんですね。
おじさんもそれはちょっと寂しそうで。 最後のネルソン・マンデラに捧げた歌で、「ずっと座りっぱなしで疲れたでしょう」と皮肉まじりにあおって、ようやくお客さんを総立ちさせた時には、おじさんも嬉しそうでした。
わたしはもう1曲目から体がムズムズしてたんだけど、ハイソな空気が漂うあの場所で、1人立ち上がる勇気もなく・・・。
思うにあのおじさんのライブを演るのに、ブルーノートは小さ過ぎたのではないかと思います。
キャパも小さい、チケットも高いブルーノートでは、来る人も限られる。
あの逞しいライブは、一部のセレブだけが優雅に楽しむって種類のパフォーマンスじゃあ、絶対ない。
つぎは太陽の下で、もっともっとたくさんの人たちと陽気に踊り狂いながら聞きたいなあ。
ブルーノートは素晴らしいハコだと思いますが、内心そんな複雑な思いも感じた、ヒュー・マセケラのライブでした。

おじさん、次は日比谷野音なんてどうでしょう? また来てね。

by KilimanjaroID | 2005-07-26 15:46


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